サステナビリティ

ガバナンス(G)

リスクマネジメント・内部統制

サステナビリティ

リスクマネジメントに関する考え方

ブラザーグループは持続的成長に向けすべてのステークホルダーの皆さまから信頼される企業を目指しています。このたび新しいグループビジョンである「At your side 2030」を策定しました。そこで掲げる顧客価値創造を阻害する要因となる可能性を「リスク」と認識し、適切なリスク管理をすることで、グループビジョンの実現性を高めることを目指しています。
当社はグローバルに複数の事業を展開する企業であるため、世界経済の影響や地政学的な要因による経営環境の複雑性・不確実性は高いと認識しています。また、コンプライアンス・製品安全・輸出管理・情報管理・環境法規・安全衛生・防災・サプライチェーンに関するリスクを常に認識し対応することに加え、危機発生時の事業継続の強化や永続可能な価値創造の仕組みの見直しなど、従来以上に中長期的かつ戦略的な観点でリスクを認識し対応していくことを目指します。

リスクマネジメント推進体制

ブラザーグループは、グループの経営に大きな影響を与える恐れのあるリスクを低減することを目的として、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、「ブラザーグループリスク管理規程」に基づく総合的なリスク管理体制を定めています。当社の各組織および各子会社はリスクとその発生可能性を把握し、影響の軽減または回避策の実施などのリスク管理に努め、その実施状況については定期的に取締役会に報告を行う体制をとっています。

リスク管理委員会は、半年に1回の頻度で定期開催しています。ただし、重大なリスク事象発生時には議長により臨時のリスク管理委員会が緊急招集され、機動的な対応を行う危機管理体制を構築しています。また、コンプライアンス・安全保障貿易・製品安全・情報管理・安全衛生防災・環境法規・サプライチェーンといった個別リスクについては、リスク管理委員会の下部組織として、専門委員会を設置し、代表取締役社長(または指名する執行役員)が対応責任者として、リスクの把握と逓減、ならびにリスク顕在時の対応を行っていくリスク管理体制をとっています。特に、製品安全については、より安全な製品をお客様に提供するため、「製品安全に関する基本方針」および「製品安全自主行動計画」を定めています。

リスク評価と対応策の明確化

事業リスクについては、各部門ならびにグループ子会社のリスク責任者を中心に評価・対応などを行う体制を構築し、また、グループ全般にかかわる重要なリスクについてはリスク管理委員会において評価・対応状況などの管理を行っています。具体的には、リスク管理委員会は毎年度リスク項目の見直しを実施し、グループの各組織・各拠点に対してリスク評価シートの作成を指示します。リスク評価シート結果を集計し、「影響度」と「発生可能性」によるリスク評価を行い、各リスクの重み付けを算定することでグループの重大リスクを識別しています。そして、リスク管理委員会から各リスク責任者に対して、各リスクの対策とモニタリングを指示しています。

コンプライアンス委員会

コンプライアンス(法令・企業倫理などの順守)に関する教育/啓発活動により、コンプライアンス意識の向上を図るとともに、違反行為の予防・再発防止に取り組んでいます。

安全保障貿易委員会

法規制に基づいて、適切な輸出取引や技術提供の管理にあたっています。また、法改正時の重要な案件審議のための委員会開催や社内監査、グループ会社への指導・教育によって、管理水準の維持・向上に努めています。

PL委員会

商品企画から研究・開発、設計・製造、販売・使用、修理・サービス、廃棄・処理に至る製品の安全性を確保するため、定期的に委員会を開催し組織的な取り組みをしています。

情報管理委員会

情報漏えいリスクなどに対応するために、会社に存在する情報および顧客情報の適切な管理方針を定め、グループ内へ展開しています。

安全衛生防災委員会

従業員の安全や健康の確保、災害の予防や災害時の被害の最小化を目的として、年間計画の審議、各施策の策定・実施、啓発などの活動を行っています。

環境法規委員会

環境担当役員が議長を務め、開発・技術・製造・総務に関連する分野の各担当役員以上が参加し、製品に関わる環境法規制、事業所における環境汚染規制などの環境課題に対する施策を審議・決定しています。

サプライチェーンリスク委員会

現在直面しているサプライチェーンに関するリスク事象に加えて、今後起こり得るサプライチェーンのリスク影響を把握し、その対応方針の決定とリスク低減をグループ内に展開しています。

重要なリスクとその対応策

項目 主なリスク内容 対応策
地政学リスク
  • 米中貿易摩擦
  • ロシア・ウクライナ情勢
  • 各国の経済制裁や規制強化をはじめ、さまざまな国際情勢の動向を常に情報収集し、状況に応じた判断を実施
プリンティング市場の縮小
  • 紙への印刷減少による、プリンティング市場の縮小
  • 変化する市場ニーズに対応する契約型サービスの拡充など、ビジネスモデルの転換加速により、収益力強化とともにお客様と継続的につながるビジネスを拡大
  • 業務用ラベリング事業やドミノ事業の拡大
企業間競争
  • 中国/アジアの新興メーカーの台頭による、市場競争の激化
  • 各市場で顧客価値を実現する製品、サービス提供への取り組み
  • スピードおよびコスト競争力のある事業運営基盤の構築
  • サステナビリティの観点で循環経済型ビジネスの推進
世界経済状況の変動
  • 世界経済の状況変化を起因とした、各地域での景気変動による業績への悪影響
  • 開発、製造、販売・マーケティング、アフターサービス・メンテナンスの強化
サプライチェーン
サプライチェーンの断絶
  • 地政学リスク等による部材調達性悪化や生産拠点の操業停止
  • 災害によるサプライチェーンの断絶
  • 国際物流網の操業低下
  • 消耗品を中心とした複数拠点生産対応
  • 予備の生産設備や部品在庫の保有
  • 部品調達先の複線化
  • 在庫保管スペースの確保および利用港の複線化
  • 各生産拠点における防火・防災・減災対策の実施
  • 欠品を防ぐための販売拠点における在庫水準の見直し
CSR調達
  • サプライチェーン内の人権問題
  • 責任ある鉱物調達
  • CSR調達基準を改定し、一次サプライヤーに対し、自社のみならず、その上流サプライヤーでの人権尊重に向けた取り組み、および当該上流サプライヤーの取り組み状況の確認プロセス構築を要請
  • RBAへ加盟し、RBA行動規範の順守をサプライヤーに対し要請することで、サプライチェーンにおけるリスク評価と是正への体制強化
  • 「責任ある鉱物調達方針」を制定し、毎年1回実施する鉱物調達調査の結果に基づきリスク評価を行い、懸念があると推定される精錬業者の利用回避要請などを実施
部材に関するリスク
  • 部材の調達難
  • 部材価格の高騰
  • 部品長期手配と在庫確保、調達の複線化、製品の設計変更による代替品の検討
  • 原材料の価格高騰リスクの経営計画への反映
  • 各市況の変化を正確に把握し調達コストを低減
品質・製造物責任
  • 市場品質問題
  • 品質管理
  • PL問題
  • 厳格な品質管理基準下における製品の製造
  • 事故発生時の被害拡大抑制に向けた対応策
法規制
コンプライアンス全般
  • 不正会計、横領
  • 不公正な取引(競争法違反)
  • 品質不正
  • 贈収賄(腐敗防止)
  • ブラザーグループ グローバル憲章(以下、グローバル憲章)の行動規範を通じた従業員の行動基準の設定と浸透活動
  • コンプライアンス委員会や相談窓口の設置
税制
  • 追加課税や国際的二重課税による税負担の上昇
  • 外部専門家との連携による対応
  • 税務当局とのコミュニケーション
  • APA(事前確認制度)の活用
環境
環境に関する社会的要請
  • 気候変動に伴う移行リスク(政策・法規制リスク、市場の変化)
  • 温室効果ガス排出削減に関する2030年中期目標の設定と削減に関する取り組みを実施
  • 電気自動車(EV)向け部品で求められる加工ニーズに応える製品を開発
  • 資源循環性向上に関する2030年中期目標を設定し、資源の有効利用、資源循環、2次資源使用の拡大を推進
  • TCFD提言に基づく気候変動が与える財務影響を分析し、適正な情報開示を実施
環境規制、環境汚染
  • 環境規制、環境汚染
  • グリーン調達基準の制定による禁止、管理対象とすべき化学物質の法規制順守対応
  • 世界各国、地域における環境法規制の情報収集と製品設計に関わる関連部門との協働による製品の対策反映
安全保障貿易管理
  • 安全保障貿易管理に関連する法規制の強化による工作機械販売への悪影響
  • 適正な法令順守体制の維持
  • グループとしての安全保障貿易管理体制の強化
  • より効率的な安全保障貿易管理体制への再構築
情報・システム
情報セキュリティー
  • 情報システムへの外部からの攻撃、製品情報セキュリティー
  • 情報管理規程に基づく情報セキュリティー運用ルールの策定および管理体制の強化と社内教育・訓練の実施
  • 製品情報セキュリティー基本方針の制定と、グループ全体における製品セキュリティーの向上活動の実施
情報ネットワーク
  • 重要システムの停止、機密情報、個人情報の流出、漏えい
  • 重要システムはダウンタイムが最小限かつ早期復旧が可能な構成
  • 予期しない外部からの侵入や攻撃に対する、多層防御に基づくセキュリティー対策の実施
  • 社内の事故発生に備えた対応組織の訓練の実施
人財
労働災害、人的被害
  • 労働災害
  • 災害による従業員の人的被害
  • 発生した災害の原因や再発防止策など情報の水平展開
  • 各拠点での安全防災活動と工場監査を通じた実施状況の確認
人財確保
  • 人財獲得競争の激化、必要な人財が確保できない、キー人財の喪失
  • 人事制度の進化や職場環境の継続的な改善
  • キー人財に対するサクセッションプランの策定
  • グローバル憲章による従業員啓発や企業広報の強化によるブランドイメージの維持向上活動の実施
M&A(減損リスク)
  • 想定どおりの投資効果が得られない
  • 事業統合の遅れ
  • ドミノのれん、固定資産の減損
  • 現行中期戦略「CS B2024」における重点戦略としてのドミノ事業の新製品投入や顧客基盤強化
  • 年に1回以上ののれんの資産価値の確認と適正な評価額での計上
為替変動リスク
  • 為替レート変動による売上の減少、コストの増加
  • 外貨建取引における受取と支払のリンク率の向上
  • 為替予約取引の実施
知的財産
  • 特許関連の係争
  • 第三者による侵害、模倣品の製造販売
  • 職務発明の係争
  • 事業活動における保有特許のライセンス利用
  • 第三者による侵害の訴えに対する防御や和解の対策
  • 第三者による侵害行為に対する知的財産権の行使
  • 発明報奨規程に基づく発明者への適切な報奨の実施

内部統制

財務報告の透明性と信頼性を維持・向上するために

経営を支える重要なインフラの一つである内部統制の維持・向上を図ることで、社会からの要請である財務報告の透明性と信頼性を確保し、ステークホルダーの皆さまから継続して高い信頼をいただけるよう努めています。 ブラザーグループ各社は、毎年、内部統制が有効に機能しているかどうかを確認するとともに、内部監査部門が独立的な観点から監査を実施し、継続的な内部統制の維持・向上を図っています。

内部統制のフレームワーク

内部統制のフレームワーク

内部監査

内部監査部は、代表取締役社長の指示により、当社の各部門・グループ子会社のリスク対応状況を検証し、取締役会・代表取締役社長・監査役会に報告しています。

内部統制に係るPDCAサイクルをより確かなものとし、業務のさらなる透明化や効率化、リスク対応力を強化するため、日本および海外のグループ会社で内部監査を実施しています。
また、ブラザー工業株式会社と米州・欧州・亜州の地域統括会社などの、内部監査部門間の情報共有や、監査役・会計監査人との連携により、内部監査機能を一層強化し

  1. グループとして、より適切な内部統制システムの構築
  2. 各拠点の内部統制に係るPDCAサイクルの自立化
  3. グループ内の各監査機能部門の連携や情報共有、IT活用による監査の効率化・高度化

を推進しながら、ブラザーグループ全体の内部統制機能の維持向上を図ります。

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